金魚の実験の話
私が大好きな金魚の実験の話をします。
まず水槽の真ん中に透明な板を立てて、片側に金魚を集めるんです。
最初、金魚は「向こうに行きたい」と一生懸命泳ぐのですが、何度やっても透明な板にぶつかって進めません。
すると、次第に「どうせ無理だ」と諦めてしまって、金魚は自分のいる側だけで過ごすようになります。

問題はそのあと。
透明な板を取り外しても、金魚はもう反対側へ行こうとしないのです。
目の前にあるはずの「世界」に気づかず、ずっと狭いスペースで過ごし続ける。
これが「学習性無力感」と呼ばれるものだそうです。
この話を聞いたとき、「これって人間も同じだな」と思いました。
「そんなの無理だよ」
「頑張ったって意味ないよ」
「世の中そんなに甘くない」
誰かがそんな言葉を投げかけると、まるで心の中に透明な壁ができたような状態になる。
最初は「やってみたい」と思っていたことも、「きっと無理だろうな」と思い込んで、チャレンジする前に諦めてしまう。
当然私自身もそうやって無理と感じることがあります。
なんなら画家になるまではずっとそう。
でもありがたいことに、今の私の周りには
「おはる、頑張れ!」
と応援してくれる人がたくさんいます。
「その絵、すごく素敵だね」
「もっと多くの人に見てもらったほうがいいよ」
そうやって声をかけてもらうたびに、「もうちょっとだけ頑張ってみようかな」と思えるんです。
そうして私は、絵を描き、広め、展示し、誰かに見てもらうということを続けてきました。
でも、今でも、時々は不安になります。
「このままでいいのかな?」
「いつか全部無駄になってしまうんじゃないかな?」
気を抜けばそんな気持ちがふっと湧いてくることもあります。
だからこそ私は描き続けることをやめない。
続けること自体が、私を応援してくれる人たちへの一番の恩返しだと思うからです。
たとえ不安があっても、手を動かして、色を重ねて、誰かに見てもらう。
それをやめない限りきっと無駄になんてならない。
私は金魚が大好きです。
ひらひらと優雅に泳ぐ姿。
美しくあるためだけに作られた儚い生き物。
なんて尊いの。

でも、私は金魚ではいられないようです。
優雅に水槽で泳ぐだけの人生は、私には無理みたいです。
ここは陸。足もある。
だったら、進むしかない。
突破、突破、突破。
私は、猫になりたい。
うちの猫の話をしますね。

脱走防止のドアがあるんですが、何度失敗しても、懲りずに突破しようとしてくるんです。
いくら失敗しても、まるで「次こそはいけるはず!」と信じているかのように、しつこくしつこく挑戦してきます。
さすが猫様。
学習性無力感? そんなもの知らないけど?とでも言いたげなその姿勢。
なんだか頼もしくて、見ていると笑ってしまいます。
このメンタル見習いたい。
猫はあたしの師匠。ロールモデル。神。教祖。
だからもし、今「もう無理かも…」と思っている人がいたら、伝えたいなと。
人の挑戦を嘲笑って「無理だろ」という人がいたら伝えたいな、と。
ねえ、本当に無理ですか?
あなたの前にある「透明な壁」はあなたも気付いていないでしょ。
だから、動いてみてほしい。
ちょっと踏み出してみてほしい。
正直あたしの挑戦を「すごいね、自分にはできないよ」と言われる度に
嬉しい反面、ドヤる反面、そう思っています。
やったら良いじゃんお前も。
おはるのあーと/Haruna Manaka